2015-12-31

2015年のふりかえり(消費編)

 いい歳なので「ふだん使うものは、いい物を買って長く使おう」とは思うのだが、難しい。「いい物」って、探す労力をかけてもなかなか見つからない。そんななかでも「いい買い物だったなあ」と嬉しかったこともある。

■ベストバイ



engineered garmentsのジャケットはすごく気にいっている。鈴木大器さんにも興味を持って、青山のブランドショップにも行ってみた。お店に並んでる商品には全然ピンとこなかった。シーズンを変えて行ってみよう。

■ハマった食べ物


  • 冷奴
  • タコの刺身
  • 枝豆
  • エリンギ
  • あぶらあげ

 おれはハマるとずっと同じものを食っている。今はあぶらあげにハマっているけれど、ふつうのスーパーでも選択肢がつきない。豊かな世の中になったんだなあ。

2015年のふりかえり(ナマで観た編)

 2015年は、イベント参加は少なめだった。
平日と週末で生活拠点が京都と東京に分断されたのが大きい。

金曜日に新幹線移動するので、帰宅してから出かけるのが大変でクラブ活動はガクッと減った。
また、単純に自宅でやりたいことが溜まるので週末に出かけること自体減った。

そんなか、特に印象深かったのは、こんな「ナマで観た」。

  • 石野卓球さんロング・セット@京都WORLD
  • 東寺の空海の書
  • 宝井琴調さん(らくごカフェ、鈴本演芸場)
  • 永野さん
  • 笑い飯 西田幸治さんの単独
  • The Jon Spencer Blues Explosion

東寺で見た空海の書はウットリするくらいかっこよかった。
「弘法も筆の誤り」って諺になるのも納得な、字の美しさ。
好きなマンガを模写するかのように、筆跡をなぞると鳥肌がたつ。

笑い飯や永野さん等、落語以外のお笑いのイベントに行くのも新鮮だった。
(もう解散しちゃった)カリカの漫才やトークイベント以来だ。
お笑い的には、いいものをたくさん観た。

いっぽうで、音楽はすこし不作だった。
クラブイベントは行ける回数が減ったし、ハズレのイベントもいくつかあった。
特に残念なのは、The Black Keysの公演が中止になったこと。

一番よかったのは、卓球さんのロングセット。
WORLDの音響は酷かったけど、楽しかった。

あと、中学、高校の頃よく聴いていた、電気グルーヴ、チバユウスケさんをナマで観て「アンチJ-Popだと思ってたボクのヒーローたちが、完全にJ-Popだった」と勝手にショックを受けた。


2015年のふりかえり(映画編)

 今年は、比較的多くの映画を観た。新作、旧作、スクリーン、DVD問わずに、印象深かった作品を挙げる。

  • 仁義なき戦い 1~4作
  • 男はつらいよ あじさいの恋
  • 椿三十郎(再び、新文芸坐のスクリーンで観た)
  • 野火
  • 浮草
  • ニンフォマニアック vol.1
  • ドラマ版FARGO
  • MAD MEN season 6, 7
  • ぼくの叔父さんの休暇

 2015年は「仁義なき戦い」シリーズにずっぽりハマった。2作目は笑えないが、このシリーズ全般は哀しいコメディとして大好き。緊張と緩和のコントラストが最高だ。

やくざの会話が、素朴な日常の言葉で交わされる。当然のことだが、それだけでも可笑しい。松方弘樹さん演じる坂井が、山守にむかって「そりゃ屁理屈です!」と怒鳴るシーン。言い方はなんとなく可愛らしいのだけれど、話題は覚醒剤。

不条理なやくざ社会のなかで、ありもしない仁義や理屈を通そうともがく姿が哀しいし、可笑しい。

 「男はつらいよ」の絶望回も衝撃的だった。
このブログにも、興奮気味に感想を書いた。書いた後に、書籍「観ずに死ねるか!絶望シネマ88」で取り上げられたのを知ったが、おれが感じたのとは別の意味での「絶望」らしい。いろんな絶望をはらんだ、名画なんだね。

 映像として印象に残っているのは、何と言っても「野火」。二度と観たくない名画だ。逆に「浮草」はあらゆるカットが美しい。男が少し、身勝手すぎるけれど。

 ドラマ版「FARGO」「MAD MEN」もクスクス笑えた。ニヤニヤ笑ったのは、「ニンフォマニアック vol.1」のユマ・サーマン。全編、ブラック・コメディとして大好きだがvol.2は少々、痛すぎて笑えない。

 どうやら、トボけたブラックなユーモアが、2015年おれのツボだったらしい。

2015年のふりかえり(創作編)

■成果

  • 今年は、電子書籍を2冊出した。
    ポンコツ新聞の第3号「へんなむし」第4号「三題噺」

  • 家族のためにヒトコマ漫画を描いて、40ページ弱の冊子を作った。

  • このブログで、散文100本を書く修業を始めた。

■所感


2015年は生業の都合で、京都に仕事部屋を持つようになった。創作のやり方も工夫が必要だった。

 マンガは、道具を二揃い買って、自宅と仕事部屋、あちこちで描いた。あちこちで描いて、あちこちのセブン・イレブンでスキャンして、あちこちで画像データを作成する。3つアウトプットできた。多いとは思わないけど、合格点。

 散文を書く練習は、100本書くまでは、何でもいいから恥を書くつもりで断続的に継続中。

今年は、ほとんど曲を書かなかった。出張があると継続しづらいあそびが音楽だ。2016年は、再び変な歌を作ってネットに垂れ流したい。

■これから

  • ドン・キホーテのマンガを描いて、フリーペーパー&電子書籍で出す。
    今は原作をたどりながら、設定やエピソードをネタ出し中。
  • ヒトコマ漫画を定期的に、このブログかELLOに載せる。
    セブン・イレブンも便利だけど、小さなスキャナ買おうかな?
  • 散文100本書き終えたら、楽器を仕事部屋に持ち込んで曲を書いて流す。
  • ジョークのデータベースを作る。
    ほんとはiPhoneアプリにしたいけど、散文とマンガと音楽が優先。
  • AWS上に電子書籍データを作る用の環境を用意しようかな

2015-12-30

宝井琴調さんのこと

 毎年クリスマスの頃に宝井琴調さんが鈴本演芸場のトリをつとめる。
落語の定席で、トリを講釈が飾るのは、宝井琴調さんだけだ。
鈴本演芸場の講釈台は、長らく使われていなかったらしい。

おれは講釈ファンではないが、宝井琴調さんが好きだ。
柳家権太楼さんがトリをつとめる時にお見かけしてファンになった。

今年は、最終日1回しか行けなかったけれど、
ひさびさに観れて、聴けてよかった。

こまったことには、公演予定がわかりにくいんだよな。
先日、電話して問い合わせたけれど、後援会はないらしい。
他の琴調ファンは、どうやって調べてるんだろう。

2015-12-29

仁義なき戦い 総集編

■仁義なき戦いをフィルムで観た


 幸いなことだ。池袋の新文芸坐のスクリーンで、フィルムで、初めの4作を観た。

たしか、菅原文太さんの追悼で「仁義なき戦い」「仁義なき戦い 広島死闘篇」を、
加藤武さんの追悼で「仁義なき戦い 代理戦争」「仁義なき戦い 頂上作戦」を。

映画をフィルムで観るということは、制作者と同じソースを、エッセンスだけ愉しむということだ、という夢をおれは観る。公開当時よりも劣化しているので、製作者の意図どおりばかりではないだろうが、きっと近いんじゃないか。良くも悪くも鮮明「ではない」から、伝わりやすいことと、伝わりにくいことがある。

主題や迫力は伝わりやすい。描きこみや言葉は伝わりにくい。はっきり言って、セリフの何割かは聞き取れないので外国映画を観るようだ。外国映画を字幕や吹替なしで観る楽しみに近い。

■ブルーレイ、原作と脚本で確認


 ブルーレイで観ると、名優の表情や情景の美しさがわかった。

笠原和夫さんの脚本を読むと、「描きこみ」と「言葉」がわかった。特にフィルムで観た時に気づかなかったツジツマがようやくわかった。飯干晃一さんの原作を読むと、笠原和夫さんの脚本がいかにすごいかがわかった。原作のあちこちに散らばるエッセンスや名台詞が、あの濃厚な脚本に凝縮されていることに驚いた。これは、作品に表れない取材と研究がすごいぞ。笠原和夫さんの資料本が昔、出ていたそうなのでチェックしてみたい。

読書感想文「水の上を歩く?酒場でジョーク十番勝負」

 ジョーク、小咄が好きなので手に取ってみた。素敵なジョークがいくつもあった。おれにとっては打率2割くらい。これはすごい。ジョークの魅力を再認識できて楽しかった。思わずジョーク集をたくさん買いこんで、データベースを作り始めてしまった。

開高健さんと島地勝彦さんの対談のように演出されていて書評で「洒落た会話」と書かれていることがある。けれど、ほとんど書き直されているのは明白だ。また、島地さんの発言(として書かれている箇所)は、下品でつまらない。おれがキャラクターを存じ上げないので楽しめないのであろう。バブル当時の読者は、島地さんのキャラクターがわかっていて、笑えたのかもしれない。
書籍だけでなく映画でもなんでもそうだけど、主役を引き立てるための「つまらない奴」をどう描くかは難しい。「つまらない奴」として演出しないと伝わらないし、かと言って、本当につまらないと、作品自体がつまらなくなる。

2015-12-28

iTunesライブラリをクラウドに置く

 初めてiPodを買った時、貴方も興奮気味にCDをかたっぱしからリッピングしたはずだ。
おれは、お気に入りのCDは、すべてiTunesに入っている。もう、Appleから逃げられない。
他社製品に乗り換えてリッピングしなおす?まさかね。

ユーザーのライブラリを手中に収めてしまうと、強い。
Apple、amazonの強みは、ユーザーの持ち物を預かってしまったところだ。


■数年前、おれのiTunesライブラリを入れていたHDD(2TB)がふっとんだ


 バックアップ手段について、より神経質に考えるようになった。

iTunesとして、最初の選択肢はApple musicだが、却下した。自分の持っている曲が自動的にクラウドと同期される点は魅力的だが、自分のロスレス音源がデグレードしてしまう。

聴き分けられるか、は重要ではない。できるだけ良い音で聴けるようにしている、という思い入れが重要だ。

ユーザーが一番、惜しげもなくお金を使うのは、すでに持っているライブラリの品質の維持なので、Appleももっとうまく儲けてくれればいいのに。


■そもそも、ライブラリを所有する、という考え自体を捨てストリーミングに移行しようかとも思った


 アナログは所有するもの、デジタルは利用するもの、と割り切れないかな、と。けど、現状ではストリーミングでは聴けない音楽のほうが多い。例えば、志ん生が聴けるストリーミングは今のところないはず。


■解決策 : iTunesライブラリをGoogleドライブに置く


 やってよかった。1~2万円で自宅にNASを買うより、月額1,000円程度で1TB借りられるほうが、安心だ。NASのファンが回る音、ディスクを書き込む音も気にならない。

さらに外出先で参照、再生できるのがよい。iPhoneに入りきらなかった曲も、Googleドライブアプリで再生できる。(音質的にはダウングレードされてるんだろうけど)


■注意点


(1) クラウド側がマスタになる


 同期を切ると、ローカルに置いたファイルが捨てられることになる。クラウド側からおとしてこればよいのだけど、それなりに時間がかかるので要注意。おれの場合、1TB程度のライブラリをアップロードするのに3日間要した。下りの回線速度は多少早いとしても、相当かかるだろう。

(2) ライブラリが先祖がえりしてしまう


 クラウドと同期させるようにしてから、度々、先祖がえりが起きた。音楽ファイル自体は消えたりはしないのだけれど、「この間、変更したリッピングした曲がなくなっている」「レーティングやプレイリストの変更が反映されていない」など。

iTunesは、ライブラリの内容をitlファイルとxmlファイルの2種類で保存するのだが、どうやら、これらが、クラウド側の古いバージョンで上書きされてしまうのが原因らしい。

一応、xmlファイルの出力を止める事で、先祖がえりは起こらなくなった。

 ここからは推測だが、iTunesは常にitlファイルを更新していて、時折xmlファイルに反映する。xmlファイルへの反映とクラウドとの同期のタイミングによっては、ローカルのxmlが古い、と判定されてクラウド側のxmlで上書きされてしまうようだ。そして、iTunes再起動時はxmlファイルを正として読み込むようだ。

年末年始にこっそり読む、ポンコツ新聞

 年末年始に、amazonにて無料で、ポンコツ新聞を配ります。
白昼夢のようなマンガなので、初夢に効くかも。

既刊それぞれ、無料配布期間が異なります。
ぜひ、無料の間にダウンロードだけでも済ませてください。

■12月30日17時~12月31日17時





■12月31日17時~ 1月4日









■1月3日17時~1月4日17時




2015-12-15

バーとかクラブ、もっと日本酒置いてくれないかな

 今年は、日本酒ばかり飲んでいる。

果実のような香りのするのが好きだ(薫酒というのだろうか)。

女性フェロモンの匂いに似ている気がする。


日本酒好きの困りごと。

夕方うっかり日本酒飲んじゃって、行きたかったクラブイベントを諦めることがある。

飲み会の1軒目で日本酒飲んで、2軒目がバーだと飲むものなくて、薄ーい水割りをすする。
飲み足りないのに、悪酔いするという。


バーとかクラブ、もっと日本酒置いてくれないかな。

ビール、リキュール類のメーカーとの契約があって難しいのだろうか。

Richie Hawtinさん、もっとがんばってほしい。



■今年、おいしかったお酒

おれは全然詳しくないいので、統一感ないのかもしれないけれど、事実美味しかったお酒たち。

京都 錦市場の「器土合爍」(丹山酒造のお酒を扱う)と、
東京駅のはせがわ酒店に、いつもお世話になっています。



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2015-12-14

料理は瞑想

 生業がうまくいかないと、あそびもうまくはいかない。

一日中、選択と判断を繰り返して疲れているんだろう。

日中は元気だった煩悩も、帰り道はシーンとしている。

家に着くと、グッタリするかボーッとするか。無為に過ごすだけだ。



ある日、帰宅して料理をしていると、疲れがとれることに気づいた。

どうしてだろう。上手に瞑想ができた時みたいに、地に足がつく感じだ。

五感を使うからだろうか。

器用ではないので、カンタンに切って焼く程度の料理。

静かなバーに立ち寄って、グラスを見つめているような気分だった。

2015-12-13

感じないのは不感症、気づかぬふりは過剰適応。

 結果がでること、「これはお客様にとって価値がある」と自信があること、

このふたつは生業の絶対条件だ。



このふたつが疑わしい時は辛い。

だれもが、ほんとうは違和感を感じているのに、気づかぬふりをしている。

騒ぎたてるやつはバカだ。



しかし、感じる以上、その違和感を信じるしかないのだ。

感じないのは不感症、気づかぬふりは過剰適応。

おれの脳がこわれているなら、おれ自身はそれがわからない。

迷惑をかけるなら、誰かが病院につっこんでくれるだろう。


自分の感覚を疑うなんて、おれは相当弱っているらしい。

たくましい猫ちゃんの横顔を見て、自分を戒める。


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向こう岸に行きたいから、早く川の水をバケツで汲み出してくれ

 生業がうまくいっていない。

お客様の言葉には応えているのに、お客様のためになっていないのだ。

■寓話


お客様が、

「向こう岸に行きたいから、早く川の水をバケツで汲み出してくれ」と言う。

上司が「上流をせきとめましょうか」

先輩が「橋をわたしましょうか」

おれは「舟を作りましょうか」

と提案するが、お客様は

「そんな金はないから、早く大きなバケツを持ってこい」

と言う。



上司と先輩は優秀なのでバケツ捌きが上手い。

おれは遅い。それに、要領が悪い。

「ほんとうに、バケツで汲み出せるんですか」

上司と先輩は「何をいまさら。それが前提だ」と答える。

「その前提は正しいんですか。誰か確かめたんですか」

「お客様が、そう言っているんだ」と、上司がいやな顔をする。

もう何も、聞くことはない。



何日かたつと、お客様が

「水を汲み出すなら、ホースのほうが早いんじゃないか」

と言う。

「どうして、言われるまで気がつかないんだ」とイヤミを言われながら

上司と先輩がバケツを置いて、ホースを手に取る。

「なるほど、これはバケツより早い」



向こう岸はまだ、遠い。

ボーッとしているおれを、上司と先輩がバカにしたような目で見る。

おれは、自分の感じる違和感に自信が持てなくなる。

明日の天気予報は、大雨だ。

2015-12-04

日本酒が描かせた絵

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2015-12-03

キャッシュレス社会では、ギャングの取引もスマホ決済なの?

■キャッシュレス先進国スェーデン

f@st companyの記事より。

要点は、
  • 国内のトランザクションの80%がキャッシュレス。
    あと8-10年には実質的にキャッシュレスになる。
    でも、完全なキャッシュレスになるには2040年頃までかかる。
  • 小額の支払いも、スマホ(Swishというアプリ)かキャッシュカード。
    新聞を売るホームレスもクレジットカードを受け付ける。
  • メリットは、盗難や組織犯罪、脱税を減らすこと。
  • デメリットは
    「全員がスマホやキャッシュカード、銀行口座を持っているわけではない」
    「プライバシーがない」

■秘密のお金ってどうなるの

 やはり気になるのは「おおっぴらに言えない」お金の使い方ってどうなるの?
という点だ。

ギャングが、薬物の取引で、「シャリーン」ってスマホ決済してたら、笑う。

  • ヘソクリ貯金は、家族にバレないの?
  • こどものおこづかいは、キャッシュレスだと味気ない
  • 貨幣がめずらしくなると、額面と実際の価値のギャップが大きくならない?
  • 未成年が酒や、タバコや、ポルノ雑誌を買ったりできないの?

 お年寄のなかには、やはり現金しか扱わない人もいるだろう。

薬物や売買春など、危ない取引も監視を恐れて現金になるだろう。

すると、「現金を持つ」=お年寄か悪いやつ ってことになる。

ギャングたちはおおっぴらに現金を持つと、警察ににらまれるから、
お年寄を隠れ蓑にして・・・と妄想する。

「悪いお年寄」というモチーフは大好きなので、今度、マンガにしてみようかな。



データを「要約」する技術 Teraki

■データ量の爆発に対する、「要約」技術


IOTが喧伝されて久しい。
センサーが生むデータ量が爆発し、手に負えなくなるのは明白だ。
通信速度やデータ処理速度も向上しているけれど、追いつかないだろう。

ちょっと古いが、Teraki というベルリンのスタートアップの記事を見つけた。

要点は、
  • Terakiというアルゴリズム(ソフトウェア)はデータの要約ができる。

  • 要約の方法は、音楽分野でfrequency decompositionと呼ばれる方法に近い。

    frequency decompositionというのは、音をsinusoidという単位に分解する技術らしい。
    よくはわからないけど、データを点の集合ととらえず波形でとらえて要約するということかな。

  • このアルゴリズムはデータ圧縮とは異なる。
    データ圧縮は、デバイスのバッテリーや処理時間を無駄に消費する点で向いていない。

  • メリットは、言うまでもなく通信量、処理時間、データ容量の削減。

  • すでに自動車メーカと実装をはじめていて、自動車が生む250MB/時のデータを10MB/時に削減し、精度は99.99%できる。

■記事の内容について


徒然と思ったことをメモ。

  • データの種類によって、適用できるか否かが変わるんじゃないか。
    波形に変換しづらい、バラバラなデータって、要約しづらそう。
    きっと精度が下がるんだろうな。

  • frequency decompositionってどんな技術?
    音がどんなふうに聴こえるんだろう。

  • IOTセンサーが発する波形を音楽として聴けたら、面白そう。
    街なかのセンサー群では、きっとアンビエントな感じだろう。
    テクノがかかっているクラブのセンサー群は、二次創作の材料になりそう。
    人や物の動きに一定のパターンがあるから。

  • IOTデータ量の爆発って、先日読んだ「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」で、数値目標が増えすぎてシステム化しても管理できなくなる組織に似ている。
    逆に言えば、企業が導入しているシステムにもデータ要約アルゴリズムの需要はある。

■人の脳にもほしい(1)

人間がメディアから受け取る情報量も、もう爆発している。

「おいしいトコどりしてくれる」を売りにしたキュレーション・サービスや「顧客の好みを学習する」は既にあるが、どれも、いまいちピンとこない。

恣意的なマーケティングが絡んでいるからだ。
本当の意味での要約ではなく、「これが金になるんです」というアピールになっていて、的を射ていない。


理想は
  1. 分厚い本を入力すると、要約がもらえる有料サービス
  2. TVのバラエティ番組の面白いところだけ編集してくれるレコーダー

1.は、人力で実現している有料サービスを利用したことがあるが、イマイチだった。

ライターがビジネス書を数ページ分に要約するサイトだったのだが、何にも伝わらなかった。
実際に読んだことのある本についても、要点を外していた。

これも、本の売り上げに響かない配慮が邪魔していたのだろう。
「続きは本書で」とか、要約ではなく紹介に過ぎない内容も多かった。

2.は、今のyoutubeが一部、違法に果たしているサービスかもしれない。


■人の脳にもほしい(2) いや、もうあるぞ。


知覚情報の処理も要約できたら、面白い。
もっと他事を考えたり、第六感が開発されたりするんじゃないか。

たとえば、特殊なメガネをかけると、視覚情報を要約してくれる。
道を歩いている時にかけると、

  • 歩くのに支障がない程度の路面変化は省略してくれる
  • 通行人の細かい動きや持ち物、表情は省略してくれる
  • 通行人のなかから、知人や、好みのタイプの異性をハイライトしてくれる
 と、ここまで考えて、「あ、これ、もうあるぞ」と気づいた。
我々の脳は、情報量の爆発に適応しつつある。

「電車内で化粧する女性」について語る時、「他人は背景」と認知されている、とよく語られる。

つまり、情報を要約して、自分に重要でないものは背景として省略し、気に留めないのだ。

この傾向はもっと加速するのだろうな。


2015-12-02

よいコンサル、わるいコンサル、ふつうのコンサル

今さらながら「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」を読んだ。

■どうして手にとったか


おれは、ITコンサルを生業にしている。
参加しているプロジェクトが、外的要因で暗礁に乗り上げてしまった。
結果としてクライアントの問題解決プロジェクトを完遂できなかった。

責任を問われる状況ではないのだけれど、これまでの自分たちの成果を反省したく、手に取った。


■主旨

イントロにエッセンスがつまっている。
おれの理解はこうだ。

「ビジネスの問題は、ことごとく人間が引き起こしている。
人間は、コンサルティングの理論が前提としている、合理的で単純な論理的存在ではない。
だから、コンサルティングの理論が論理的に正しくとも、必ずしもビジネスには効かない。」

「問題のほとんどはコミュニケーションだから、ちゃんと話そう。
コンサルタントに『考えること』を丸投げせず、自分で考えよう。
そのうえで、うまくコンサルタントを使おう。」


■イチャモンをつけるなら


「コンサルティングの理論が正しくない」証明として、本書では反証が複数示されている。
著者の言うとおり「理論の誤りを証明するためには、反証がひとつ見つかれば十分」だ。

論理的には。

イチャモンをつけるなら、
「もしビジネスや、それを動かす人間が必ずしも論理的ではないなら、その反証は、理論の誤りを証明できない」
のだ。
「コンサルティングが効く場合も、効かない場合もある」という証明にしかならない。


おれは、本書で批判されているコンサルティングの理論が誤っているとは思えなかった。
「こんなケースでは効かなかった」という失敗事例集として読んだ。

じゃあ、読んでいてつまらないかというと、そうではない。
自虐的なあるあるネタとして愉しみ、反省した。


■コンサルタントのよしあしの差は、明文化しづらい


よいコンサルタントは、とにかく結果を出す。
結果とは、クライアントが抱えていた問題の解決だ。

いっぽう、わるいコンサルタントはゴミを作る。
そして、その自覚はない。
なぜなら、問題の解消に至る前にクライアントに契約を切られ、結果さえ見ないからだ。

ふつうのコンサルタントは、ただの「デキる」秘書だ。


出す結果には歴然とした差があるのに、その差を明文化するのは難しい。

ひとつだけ、はっきりとわかるのは、わるいコンサルタントは「嫌なやつ」だ。

  • コミュニケーション能力が低く、自分の身のほどや無知を正しく認識していない(イタい)
  • 偉そうに読みかじった方法論を無根拠に振りまわす(素直なクライアントは迷惑をこうむる)
  • クライアントの陰口をたたく
  • プライベートでは、できるだけ顔を見たくない

 同じコンサルティングの方法論を使っても、よいコンサルタントが使うと問題が解決し、わるいコンサルタントが使うと問題を悪化させる。

「嫌なやつ」は仕事の結果は出せない、という点は、本書の主張と近いのかもしれない。




申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
I'm Sorry I Broke Your Company

カレン・フェラン(Karen Phelan)著
神崎朗子訳
大和書房

本書を読んでいて、同じスタンスの本を思い出した。
世の中で盲目的に「信じられている」心理テストの反証をした書籍。
おもしろかったー!

歯のないブルーズ・マンがなぜかっこいい

■ヒル・カントリー・ブルーズにうっとり


体調が悪くて寝込んだ。
日中、ウィスキーで喉をうるおしながらDVD「You See Me Laughin' : Last of Hill Country Bluesmen」を観た。

90年代、00年代に、突然、若い世代の一部を熱狂させたブルーズの1ジャンルについての映画。

演歌の「ブルース」と混同されて「古い懐メロ」というイメージがあるかもしれないブルーズの、猥雑で荒削りな魅力が満載。
ブルーズのジャンルとしては、ブロークン・ブルーズと呼ばれるジャンルじゃないかな。

正直、英語は半分以上聞き取れなかったのだが、うっとりするほど素敵だった。



■伝説を伝承するスター、伝説そのものが登場


おれも00年代に少し遅れてブルーズにうなされた一人だ。
多くのブルーズ好きがそうであるように、入口はロック、ポップスのミュージシャンからの参照だ。

おれの場合は、ストーンズに始まりジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョン、ブラック・キーズだ。
おれにとってのスターが、さらに上空で輝く、マディ・ウォーターズ、R.L.バーンサイド、ジュニア・キンブロアを教えてくれた。

この映画は、その熱狂を作った人たちがたくさん出てくる。
おれの世代にとっては、音楽の先生だ。
前述のジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョン、イギー・ポップ、U2のボノ、ファット・ポッサムの関係者。
(ボノは、本人の歌は大仰で好きではないけど、好きなものは共感するのが不思議。
ジュニア・キンブロア、チャールズ・ブコウスキー、エッジのギター。。。)

それだけでなく、R.L.バーンサイド、ジュニア・キンブロア本人も登場する。
T-モデル・フォードもかっこいい。

要するに、贅沢な映画なのだ。
クラシック音楽に喩えると、一流の音楽の先生が魅力を語るだけでなく、ベートーベン本人も登場する。しかも演奏シーン盛りだくさん、という感じだ。


■陶酔という愉しみかた


ジュニア・キンブロアがやっていたジューク・ジョイントで、愉しんでいる観客も素敵だ。
お洒落や洗練とはほど遠いが、うっとりするような自由と猥雑さと熱がある。

こんなクラブがあったらなあ、と思う。
お洒落で陶酔からは遠いクラブやライブスポットが多い。



■歯のない男が、なぜカッコいい


伝説的なミュージシャンの2000年頃の演奏、インタビューがたっぷり収録されているが、みんな、ことごとく歯がない。
服装もいなたい。
初めて入った居酒屋の隅っこに、こういうおじさんいるなあ。

それが、なぜ、こんなにカッコいいんだ!
イケメンじゃないカッコよさ。憧れる。




DVD " You See Me Laughin' "
Fat Possum Record

R.L. Burnside, Cedell Davis, T-Model Ford, Junior Kimbrough
Bono, Iggy Pop and The Jon Spencer Blues Explosion

2015-12-01

SUN RAの音楽をたとえよう!(大喜利状態)

■たとえようのない、SUN RAの音楽

プライマル・スクリームのXTRMNTRの影響として挙げられていたので
関心はあったのだけれど、本格的に聴いたことのなかったSUN RA。
あまりレコード屋さんに行っても置いてないんだ。

amazonプライム・ミュージックにたくさんアルバムが入っているのを見つけた。
座禅組んだり、考えごとしたり、絵を描いたり、文章を書いたり、ウトウトするのに気持ちいい。
こういう場面はテクノもよく聴くけど、それとは違った効能がある。

それにしても、なんとも喩えようのない音楽だ。
言葉で説明しづらい。

ジャンルやラベルがつけられない。
レコード屋さんに「置いてない」というよりは、どの棚に並んでいるかわからない、といったほうが正確かもしれない。

言葉で把握できないものは、語れないでしょう。

ということで、なんとか言葉で説明しようとがんばってみた。

水平思考を言葉で説明しようとするような、無粋な振る舞いとは承知の上で。
抽象的なものを具体化したり、ないものの姿を想像させるのが、おれの生業と趣味なので。


■お題「SUN RA MEDIA DREAMS」


アルバムごとによって全然違うのでお題のアルバムを挙げます。



■たとえ1



超新星フラッシュマンの悪役が、
遺伝子シンセサイザーで怪獣を造る時の音楽


■たとえ2

中国の「ひとりっこ政策」で
クリスマス・イヴにテレビから発信されていた電波



■たとえ3

桃太郎がモモの中で大きくなるまでの、
いやらしい一部始終



■たとえ5

好きな子のリコーダーを盗んだのはボクじゃない、
と主張する小学生の心情


■たとえ6


CD『志ん生が読む 六法全書』



いやあ、難しい。

人気キュレーターの情報源、一次情報

■海外の一次情報


最後に海外に行ってから1年以上経つ。
モンティ・パイソンの最終公演を観にロンドンに行ったのも昔。

以前、海外の仕事をしていたから、おれは英語は多少できる。
いや、できた、と言うべきか。

仕事も変わって、プライベートでも海外旅行の機会は少ない。
使う頻度が少なければ、回路は錆びる。
大好きな海外ドラマ「Mad Men」も、英語字幕付で6割わかってるか不安、ってレベル。

だから、リハビリとして意図的に、英語を読む機会を増やしている。


■人気ネット記事の一次情報


よくチェックしているネット記事は、その一次情報をたどるよう心がけている。
すると、海外のニュースソースを見つかる。

日本語の、人気記事や有名キュレーターのブログが、
意外と少ないソースでできているのは驚きだった。

海外のニュースソースそのものをチェックするようになると、
ネット記事や職場での話題は既視感を感じることが増えた。


■既視感による優越感 << アクションを起こす才能


人気記事に既視感を感じるということは、自分のアンテナ能力の不足を感じるということだ。

「ああ、その話は知ってる」という優越感もないことはない。
しかし、ニュースが琴線に触れ、「記事/話題にするアクションを起こす」に至っていないのは事実だ。
(ネット記事の中には、琴線より金銭に触れてるケースもあるだろうけど)


アイデアを思いついたり、面白さに気づくのとは別に、
アクションを起こせる才能はうらやましい。
なかにはさらに、わかりやすいパッケージングができる、
という才能を持った人は、特にうらやましくてしょうがない。